びわ湖漁師 中村清作 新聞コラム第10話 2015年1月7日掲載


 
鮒味噌 湖北の冬の妙味
 
あけましておめでとうございます。年末年始、どうお過ごしでしたか? ぼくは大晦日まで、いつもお世話になっている長浜市の淡水魚専門店で売り子さんをしていました。ここで過ごす一日一日が実におもしろい。この季節は子持ちの鮒がとてもおいしく、たくさんの方が買いに来られます。どうやって食べるん?と聞くと、鯉の煮付みたいに醬油で炊く人もいれば、「鮒味噌」といって味噌で炊く人もいます。

「鮒味噌」は湖北の冬の味です。知ってたらなかなかの湖魚マニア。あっさり炊いて身をほじくって食べる人もいれば、番茶やほうじ茶でコトコト骨まで柔らかく炊き、味噌・砂糖・酒を加えてさらに姿がなくなるまで煮る人もいます。調べてみると、元々は岐阜県や愛知県の郷土料理。どんなものなのか岐阜県の魚屋さんまで買いに行ってきました! 岐阜県はやはり赤味噌でした。隣の長浜では赤味噌派と普通の味噌派がいます。各家庭で味も作り方も全然違うんです。まとめて炊いて、ご近所さんに「おいしく炊けたよ」って配るのが定番。きっと「おいしかったわ! どうやって炊いてるん?」の一言がうれしいからだと思う。

「みな喜んでくれたわ! 全部配ってしまって自分のがなくなってしもたし、また買いに来た!」って聞くと、漁師として心からありがとうって思う。ぼくたち漁師は魚を捕るだけやと食べる人と気持ちが離れてしまうけど、お客さんの喜ぶ顔やありがとうの一言で「こんなに必要とされてたんや」と気付く。今年もがんばるぞ!  
  
文 / 中村清作
写真 / オザキマサキ