びわ湖漁師 中村清作 新聞コラム第7話 2014年10月15日掲載


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

オフシーズンは網の修理

10月の琵琶湖は小鮎もビワマスも禁漁期。少しのんびりした季節です。小鮎が解禁になると、漁師はバタバタと忙しくなるのでちょっくら充電中。でも、ワカサギ・エビ・シジミなどが毎日琵琶湖から水揚げされているので、お店で見かけた時はぜひ食べてください。「売れる=必要とされる」。漁師にも魚屋さんにもすごく大切なことです。

海とちがってかなり狭い範囲で取引される琵琶湖の魚は、消費者からの声が漁師にダイレクトに伝わります。「お店でよく売れてる」「あまり売れない」。僕たち漁師はみなさんの声(選択)を聞き耳をたててしっかりと聞いています!

さて、琵琶湖にたくさんの黒いポールが立っているのをご存じですか?
よく「養殖用?」と聞かれますが、あれは「エリ」と言いまして、魚をとるための小型定置網漁のひとつです。空から見ると矢印の形です。魚は何かにぶつかるとそれに沿って移動する、その習性を利用し、袋小路に誘います。棒の間に網がはってあり、逃げることができません。小鮎・鰻・エビ・モロコ、このへんを泳いでる魚はなんでもかかってこい!の琵琶湖漁業を代表する万能君です。

エリ漁師さんはオフシーズンの今、何をしているのか?エリを三つ持つ先輩のところへ行くと、破れたり穴が開いたりした網の修理中でした。たったひとりで長さ延べ数㎞もの網を針一本で直す。いつもは湖上でバリバリの兄貴のゴツイ手が、いま陸上ですばやく繊細に網をつくろっている。その網が今年もまた琵琶湖に入ります。

文 / 中村清作
写真 / オザキマサキ