びわ湖漁師 中村清作 新聞コラム第9話 2014年11月26日掲載

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

超一級品 親父の手作り網
 
船を走らせると湖上はもう冬。僕の船にはキャビンがないので寒いのなんのって……。いよいよ小鮎漁の始まりがちかづき漁師たちはそわそわしてます。さてきょうは網の話を少し。
 
北風がよく吹くこの季節、漁に出られないときは網の掃除や修理をします。僕とオカンは網掃除、親父はひたすら部屋にこもって網を仕立てます。漁法や魚の種類・大きさによって本当にたくさんの種類の網が必要で、うちは網用に倉庫を3カ所も借りています。
 
おじいちゃんが使っていた網も修理してまだ使っています。ひどく傷んだり、違うサイズが必要になったたりした時は親父が作ります。網の真ん中のふわふわの部分に、上のロープと重りが入った下のロープをコツコツ縫いあわせます。
 
急ぐ時は網屋に作り方を指定して仕上げてもらうこともできるのですが、網屋がミシンで縫った網は、親父が自分の手で何日もかけて作った網と比べると魚のかかりが全然違います。ふわふわ部分は既製品で同じなのですが、上下のロープを縫い合わせるのに手と機械ではほんのわずかな違いがあり、そのほんのわずかな違いで網目がきれいなひし形にならず魚がかかりません。漁師によっても作り方や糸の太さ、種類が違い、魚のかかりが全然違います。
 
おじいちゃんから受け継いだ技と、毎日琵琶湖に出て感じるコトや変化を少しずつ反映させてできた親父特製の網。超一級品です。たまぁに引っ掛けて破れたりすると、やってもうた!っと冷や汗が出ます(笑)
  
文 / 中村清作
写真 / オザキマサキ